雨上がりの虹を見上げたような
祈りのような音。
☔ 雨音の序章
今回のライブのタイトルにもなったAtlantis(アトランティス)。
水没されたとされる伝説の理想郷。
ステージに設けられた神殿にumbrellaがとてもよく似合う。
暗転のステージ。
静寂からストリングスの音が鳴り響く。
複数の旋律が重なり合うメロディ。
優しさの流れで空間が満たされていく。
たまらなく美しい流れがそっと心に入ってくるような響きだ。

このへん…静かなのに、やさしさで満ちてるの、不思議なんや…。
徐々に青い光が会場を包んでいく。
バックスクリーンには降り注ぐ雨。
情景がリンクする音の流れに、心臓が震えるように騒ぐ。
ストリングスが途切れたわずかの「間」。

空気ごと、染みるぷち…
あの曲が始まる瞬間である。
☔ 雨音を包む
ゆっくりと、白い光が立ち込めてくる。
光の中、三人がステージに立っている。
中央にはギターを手にした大森。
上手に若井、下手に藤澤。
ステージ上には、やさしい光に包まれた表現者たちの姿がある。
大森は、藤澤の方をやさしく見つめる。
何かを伝える合図? それとも、想いをゆだねるような眼差しだろうか。
その表情は柔らかく、静かに開かれる物語のようだ。
噛み締めるかのように丁寧にギターを響かせる若井。
一音一音の優しい音の粒が身体の奥にまで、そっとしみわたってくるようだ。
ベースはスライド音を交えながら、ドラムのアクセントを正確にとらえている。
ドラムはシンプルなリズム。
そこにスネアドラムで添えられた小さな音。
この音がなければ、この曲のイントロは成立しない。
それほど大切な必要不可欠な音だ。

わかる…
その音、まるで最初の息づかいなんよなぁ。
そして、ブレイク直後。
若井とベースの音が絶妙なバランスで絡み合う。
すでに、音の物語が始まっていた。
☔ 雨粒
藤澤が奏でる音に、大森はそっと身をゆだねる。
その音に寄り添うように、優しいメロディが生まれていく。
託すように支えるように、静かなつながりを感じる。
ドラムは小節の頭にバスドラムを刻む。
そしてスネアの小さい音を織り交ぜながら、静かにリズムを刻んでいく。
丁寧に扱われた音のリズムが気持ちのいいグルーヴとして重なる。
聴こえてくるすべての音が地面に染み渡る雨粒のように美しい。
人が連なって
大森の歌が始まると、そこにドラムが絡みついてくる。
ドラムフィルは歌のアクセントに合わさり、歌に寄り添う。
主張しすぎず、けれど確かに変化を与える。
歌のすき間に息を吹き込むように、色を添えている。
ステージでは天使たちが舞い始め、ひとつの音景を描いていく。
☔ この音の名前
色が付いたら 僕に名前をと
ベースが深く息を吸い込むように、しっかりとリズムを刻み出す。
目に見えない色が、空気を伝って心に染み込んでくる。
ドラムはシンプルなリズムで楽曲に溶け込んでいる。
スネアの響きがあまりにも気持ちよくて、うっとりする。
スネアドラムを叩くスティックは、おそらく真ん中よりほんの少しだけ手前を打っている。
そうすることで、芯がありながらも柔らかく、歌にすっと溶け込む音になっているのだろう。
まるで、別の次元から届いた音。
心地よさと同時に身体が震えて止まらない。
今この瞬間、ステージ上のすべての音が、同じ感情で、この曲を理解しているのだ。
こうして届けられる音の素晴らしさに言葉を失う。

きっと神様もきいてるぷち…
☔ 傍に立つ音
間奏…。
若井とベースの絡みがまた面白い。
会話のように、時に遊ぶように、音が交差する。
ふっと、気持ちがリセットされたような感覚になる。
緊張が緩み、次の展開へ向かう呼吸がはじまっている。
苦しいけど歌唄うわ 唄えど
再びメロディが始まると、さっきまでと様子が違う。
A1と同じ旋律のはずなのに、どこか表情が変わって聴こえる。
誰かに語りかけているような声。
若井のギターも、感情をなぞるようにアプローチを変えてくる。
その音は、すぐそばに立ってくれているような距離感。
ベースは高めの音階で、胸に迫ってくる。
バスドラムは、小節の頭にただ一音だけ。
そのシンプルさが、空白の中でひときわ響いている。
大森がギターでコードをひとつ鳴らす。 寄り添う為に神様は
その瞬間、思わず目がうるんでしまう。
理由はわからない。
でも、なにかが確かに心に届けられた。

届いたぷち…。

うんうん。
なんかわからんけど、ろろんにも届いた!
☔ 声が託したもの
胸が痛い この痛みに名前をと
大森の歌が、静かに変化し声の輪郭がくっきりしていく。
それに応えるように、ストリングスが重なってくる。
力強くもあり消え入りそうな、なんとも言えない美しいシーンだ。
そして迎える間奏。
おーおーおー
大森の歌声のバトンが楽器隊に渡される。
まだ少し残る声の余韻を受け取った若井のギターは静かに、憂いを抱きながら引き継ぐ。
その音は、何かを抱えながらも進もうとする音。
ベースとドラムも、そんな若井をそっと支えるように寄り添っている。
支える音に、安心がにじんでいる。
ドラムのバランスも最高にいい。
タムが交じったフィルは、深みがあり楽曲に色を与えるようだ。
音楽は、言葉を使わずに次の感情へと橋をかけていく。
そしてフィルで場面が変わる。
☔ 呼吸
君と一緒に何を観よう
僕と一緒で良かったの?
このセクションは、大森と藤澤のふたりが、まるで観客に語りかけるように歌を紡いでいく。
それは対話のようで、同時にハーモニーでもある。
静かで、でも確かに胸に染みてくる音の重なり。
藤澤のアプローチは、いつも以上に繊細で柔らかい。
ふたりの間にある空気ごと、音にしているようなアンサンブル。
ブレスのタイミングもピッタリだ。
☔ 虹を待つ
次の展開に入る直前、音のテンションがふっと変わる。
大森のテンションが一気に上がる。
感情を思わず吐露するむき出しの声。
どうにもならないことをどうすることもできない遣る瀬無さに満ちている。
その瞬間、観る側の気持ちも、一気に曲に引き込まれていく。
イケメンすぎるドラムのアプローチが、着火点のように思いを押し上げている。
そのリズムに大森の感情が乗って浮かび上がるのは素晴らしい景色だ。
🌂 この曲の役割
色が付いた
色が褪せた
とてつもない切なさで、糸が切れたように涙腺が崩壊している。
悲しさの中、美しい景色を眺めている、そんな情緒に襲われる。
空が晴れた 僕に名前をと
感情は完全に決壊し流れ出す。
ミセスの曲を聴いて、感じたことを記すのに、最適な言葉は何かと毎回考える。
ただ、「言葉にできない」という表現でしか書けないことがある。
それがまさにここだ。
ただ、ひとつ言えることがある。
この曲が持っている力だ。
確実に届ける力を持っている。
この曲は、その役割をしっかりと果たしている。
…そんな風に思う。

これを魔法っていうんやで。
特別な魔法使いだけが使える最高の魔法やねん。
lala…
祈りのような音。
大きな流れが過ぎ去った後、少し、心が和らぐ。
雨上がりの虹を見上げたような、ささやかな希望の音に救われたようだ。
☔ 名曲:umbrella
大森は終始、ステージの中央に立ち続けていた。
藤澤も若井も、定位置を動かずに音を奏でる。
ステージ上で動いていたのは、天使たちだけだ。
けれど、場面ごとにステージ全体の表情は確かに変わっていた。
この曲には、明らかに特別な感情が宿っている。
何度聴いても、曲の顔が変わる。
完成されたはずの音楽が、聴くたびに違う場所を触れてくるのだ。
心を揺さぶる力。
思考を止めて、ただ没頭させる力。
知らないうちに世界に引きずり込まれている、そんな感覚。
そして確信する。
この曲は、名曲のひとつであると。

この曲を浴びたあと、心がすっかり雨あがり。
濡れてよかったと思える音やったもんっ!

ろろん…びしょぬれぷち…。
でも、うれしそうやから…安心したぷち…。
A magical record drawn from a captured moment.
『umbrella』 ― Atlantis2023
Mrs. GREEN APPLE
🍃 Official site
